大秦線

万トン貨物の魅力

和諧1が牽引する大秦線の石炭貨物列車
 
 北京から列車で北西方向に2時間ほど乗車し、着いた場所は北風吹きすさぶ河北省沙城。永定河を渡る豊沙線(北京豊台〜沙城)の車窓からは、高架の高規格路線が山の西側よりこつぜんと出現し、我々の乗る豊沙線の線路の上を跨ぎ、そのまま東の山中に消えていくのが見えた。そして、遠く離れた陸橋の上にEH級の永久連結型電気機関車が長蛇の貨物を牽引する姿を確認。あまりの長さにただ驚くばかりだ。
 この路線は、大秦線と呼ばれ、山西省の大同から東の秦皇島港まで石炭を運ぶバイパス貨物路線として誕生。発達する沿岸部の火力発電エネルギー消費に必要な石炭を1〜2万トン分満載した貨物列車が10数分おきにやってくる光景はまさに圧巻。そんな中国屈指の貨物輸送専用線である同路線の現状と歴史を追った。
 

中国河北経済を支えるライフライン

韶山4Gが牽引する大秦線の石炭貨物列車
 
 1992年に全線開通した大秦線は、石炭の産出が豊富な山西省の大同と東北につなぐ海運港を持つ河北省秦皇島を結ぶ、全距離652kmの複線電化を持つ重貨物専用線で、そのうちトンネルは54箇所、橋梁は421箇所に設置されている。
 高規格路線のため、パッと見た感じは、新幹線の橋脚をイメージしてしまう人も少なくない。04年の4月までは客運も行われ、時刻表にも掲載されていたが、同年の4月18日以降は貨物列車専用路線になっている。
 現在、同路線は一編成に最大で石炭「2万トン」を積載する運炭貨物列車を中心に運行されており、1日の輸送量は約85万トン。使用する貨車はC63型やC70型、C80型と呼ばれる専用石炭無蓋車で、1両あたり約80トンの積載力を持ち、最大編成は216両。編成全長は2.6kmに達し、世界の長大貨物列車ランキングの五本の指には楽々入る。そんな長大貨物を牽引する電気機関車はEHクラスの重機関車たち。韶山4GやDJ1、HXD1(和諧1)HXD2(和諧2)などが、先頭に重連、中間編成に重連、最後尾単機と最大5機(10両)を連結し、先頭車からアメリカGEの車両無線同時操縦技術を使い、統括制御を行なっている。この貨物輸送のために、大秦線は新型のHXD(和諧)を180台(73億4000万元)の納入を予定している。
 
 大同から秦皇島までは石炭を満載して向かうため、一編成最大40機のモーターをフル回転させながら走るその姿は迫力に満ちており、反対に大同への戻りは石炭が空っぽの無蓋車だから、足取りも軽やかだ。貨物列車の平均時速は約70km/h。ダイヤは約10〜15分に1本の間隔で運行され、山の中腹から眺めるその姿はまさに圧巻。ビデオに撮ろうものなら先頭から最後尾まで2分半かかる。あまりにもスケールが違いすぎて、旅客が運行されている豊沙線がなんだかみすぼらしく見えてしまうほどで、一般の路線の貨物列車とはまるで比較にならないスケールの大きさだ。
 07年度の大秦線の年間輸送量は3億トンに上るが、今後は3億5000トンを目標にしている。そのため、インフラ整備にあたる線路沿線の拡充と、列車速度を80〜90km/hに引き上げ計画を行なうなど、その動向にはますます目が離せない。