高級軟臥

中国列車ホテルスイート

中国鉄道がスピードアップを伴うダイヤ改正を開始した1997年5月、北京・上海から香港地区を結ぶ花形列車に高級軟臥と呼ばれる新型車両が登場した。かつて最高クラスだった軟臥よりも広い空間や、高級感をあしらった装飾など、従来の車両より快適な設備を備えたこの車両は、以降、ダイヤ改正が進むたびに特快列車を中心に編成され、中国鉄道のホテルスイートとして注目を集めている。

高級軟臥で快適な車内ライフを

RW19K型  高級軟臥は別名高包とも呼ばれ、かつては外交国賓クラスのおもてなしの象徴として国際列車に連結されていた。しかし、人民の所得が上昇し、航空会社との競合激化により、車両ランクの向上を目指した中国鉄道部により国内路線向けに高級軟臥を投入するようになった。
 例えるなら日本の北斗星でいう”ロイヤル”クラスで、各個室は2人専用設計を施し、豪華な設備を備えている車両となった。特徴として、2段ベッド幅は従来の軟臥よりも広く、通路側に設置されたテレビモニターから映し出される映像をチョイス。テーブルを挟んでソファーを配置し、後部には衣服を収納するクローゼットがある。また各個室に専用設計のトイレと洗面台が設置しているため、並び待ちをしなくてすむ。セキュリティーもバッチリで、セーフティーボックスや乗務員室につながる車内電話も設置されているほか、車両によってはシャワー室も設定しているから驚きだ。
 これらの車両は、国際列車のほか、Z列車や特快にも編成されており、なかでも北京と地方主要都市を結ぶ夕方発朝着の夜行列車に連結されている場合が多い。移動しながら快適に過ごせる中国鉄道スイート、こと高級軟臥に乗車して、ワンランク上の列車の旅を楽しもう。
※基本的に高級軟臥の料金は軟臥料金×約1.8倍が相場だが地方鉄路局管轄によっては、2倍以上の料金がかかる。

CRH1E WG型

CRH1E高級軟臥 CRH1E高級軟臥
 09年11月5日に登場したBSPの寝台動車組、CRH1Eに連結された高級軟臥。16両固定編成のため、高級軟臥の位置は10号車。個室内は2人部屋8室に分かれ、個室は2段ベッドのほか、独立トイレがカットされた分、ソファーが拡大され、クローゼットも大きくなった。ただし、部屋の広さは通常の寝台動車組の軟臥と変わらず、ベッドの奥行きも同じ。また、車内音声の音量調節がないため、うるさい放送に苦虫を潰す羽目になる。付加価値をしいて挙げるなら新車だというところか。
 車両には両端にトイレが設置されているほか、ソファーや置物が置かれたリビングなどもあるが正直客車の高級軟臥に比べてお粗末。個室をはじめとするスペース効率が下手な設計の代表車両であり、お得度は低く、高い金を出してまで乗る価値はない。現在、京滬動車組の上海局で運用に就いている。

RW19T型

RW19T型  04年に登場したZ列車(直達特快)を中心に連結している高級軟臥。定員は16名で部屋数は2人用の8部屋。まだ新しいため、比較的きれい。2段ベッドに、とテーブルを挟んだソファーと専用設計のトイレ設置が特徴。ベッドの下段は約80cmと軟臥より広く、通路側の壁にはテレビモニターが付いており、数チャンネルのプログラムをチョイス。乗客は備え付けてあるイヤホンで映像を楽しめる。
 窓側には空気調節のメモリとコンセントAプラグとO2プラグ対応の電源(220V)および、乗務員を呼び出すボタンが、室内に備えられている。各個室にトイレがあるため、車両自体には設置されておらず、また通路には電源もない。料金が高いのでよほどのことがない限り、駅での自力切符購入も可能。

RW19K型

 特快や快速に編成して高級軟臥で定員は20名。8部屋あるうち、両サイドは4人用の軟臥となっており、残りの6部屋が実質的な高級軟臥。01年10月の北京〜上海間の夜行特快に登場したあと、03年の3月頃、北京発の特快を中心に一気に配備が進んでいる。
 内容はRW19Tとトイレの位置や車内電話の設置等の変更を除けば、たいした差はない。車内電源はコンセントAプラグと02プラグ対応の電源(220V)。元々専用列車として設計されたため、コンパートメントの扉は自動ロックがかかる、セキュリティシステムが採用され、切符と引きかえにもらう電磁カード(換車票)で出入りする。

RW19K型 [香港直通専用]※

RW19K滬寧特快用  1997年5月、香港返還を記念して開通した、北京西、上海−九龍(ホンハム)間の特快で使われている高級軟臥。16名定員の車内は木目および金メッキで施され、各個室はテーブルを挟んで下段ベッドのみで上段を取り外した印象。部屋に電源はなく、通路側にコンセントO2プラグ対応の電源(220V)が2〜3箇所設置されている。
 この車両登場時話題になったのはシャワー室で、もともと欧米人の大陸香港直通旅行の需要を喚起するために造られた。しかし03年、北京・上海市民の香港自由旅行解禁に伴い、シャワー室を使う頻度が少なくなった原因とメンテナンス不足による故障が重なり一時お土産倉庫まで格下げになったが、改装され再び使用できるようになった車両もある。
 08年1月より、北京西、上海からの香港直通列車が25T車に変更され、それに伴い、高級軟臥も19T車に置き換わってしまったため、残念ながら運行されていない。

RW25K型

T15次広州行 一人用個室  1999年登場、06年1月まで北京西−広州間のT15/16次で使われていた高級軟臥で定員は16名。部屋の数は4人用個室が1部屋、2人用個室が5部屋、1人用個室が2部屋の合計8部屋で、別にシャワー室が設置されている。
 特長はなんといって1人用個室の存在。ベッドは独自設計で、電源や液晶モニターも完備。おまけに隣シャワー室と、当時としては最高級の個室だった。
 肝心のシャワー室は栓をひねっても蛇口からはチョロチョロと水が流れてくる場合もあるので、期待するとかなり損した気分になるので注意。 2人用の個室は上のRW19K(香港行き)と変わらない。現在、広州客運段に放置されているが、ツアー列車である南方快車に連結されていることもある。

RW19型

国際列車用高級軟臥  北京からモスクワ/ウランバートル行きの国際列車に連結されているダークグリーンの表皮をまとったドイツDWA製の高級軟臥車。かつては「軟包」とも呼ばれていた。内装は豪華かつ質実剛健といった合理的さを感じさせる造りで、ニス塗り木目調の光沢に目が行ってしまうほど。
 部屋の数は2段ベッド2人用個室が8室あり、他に従業員室と機械室がある。2部屋間に洗面台が設置され、それぞれ共同でシェアする。
 この客車は車軸発電で電気を起こすが、空調は設置されていない。しかし、冬は各車両に設けられた暖炉で従業員が石炭を燃やすことにより、熱を作り出す原始的な方式を採用している。理由は−40度近くの場所を走るため、万一機関車や電源車が故障したときのことを考えると、信頼の不安な電機発動熱より安全性が高いため。
 洗面台扉近くの足元に、コンセントCプラグ対応の電源(220V)が設置されている。現在走っている車両は1996年製。そのため続々と登場する新型高級軟臥と比べると、やや古いイメージこそあるものの、さすがドイツ製! といわんばかりの質感の高さは中国車両の比ではない。国際列車に乗るときは、是非この車両で窓外の景色を楽しみ、車内ライフを過ごそう。
高級軟臥を連結している列車
列車番号 運転区間 列車
種類
車両
種類
室内
電源
上段
料金
下段
料金
K3/4次 北京―莫斯科 国際 RW19
丸穴2個
6021元 6021元
K19/20次 北京―莫斯科 国際 MECT18 6827元
K23/24次 北京―烏蘭巴托 国際 RW19
丸穴2個
1790元 1790元
T97/98次 北京西―九龍 香港
直通
RW19T HK$1191 HK$1191
T99/100次 上海―九龍 香港
直通
RW19T HK$1039 HK$1039
D313/314次 北京―上海 D寝台 CRH1E WG 1300元 1470元
D351/2/3/4次 上海虹橋―重慶北 D寝台 CRH1E WG 1955元 2200元
D355/6/7/8次 上海虹橋―成都 D寝台 CRH1E WG 2075元 2330元
Z19/20次 北京西―西安 直達 RW19T 782元 816元
Z29/30次 北京―揚州 直達 RW19T 757元 791元
Z37/38次 北京西―武昌 直達 RW19T 757元 791元
Z55/56次 北京西―蘭州 直達 RW19T 951元 993元
Z61/62次 北京―長春 直達 RW19T 707元 735元
Z65/66次 北京西―南昌 直達 RW19T 858元 895元
Z67/68次 北京西―南昌 直達 RW19T 858元 895元
Z73/74次 北京―合肥 直達 RW19T 702元 737元
Z77/78次 北京西―漢口 直達 RW19T 757元 791元
Z95/6/7/8次 上海―太原 直達 RW19T 951元 993元
Z133/134次 北京西―井岡山 直達 RW19T 1022元 1086元
T15/16次 北京西―広州 特快 RW19T
1399元 1447元
T31/32次 北京―杭州 特快 RW19K 951元 993元
T43/44次 北京西―西安 特快 RW19T 782元 816元
T47/48次 北京―斉斉哈爾 特快 RW19K 993元 1036元
T59/60次 北京―長春 特快 RW19K 707元 735元
T63/64次 北京―合肥 特快 RW19K 702元 733元
T65/66次 北京―南京西 特快 RW19K 737元 767元
T75/76次 北京西―蘭州 特快 RW19K 1022元 1068元
T77/78次 上海南―桂林 特快 RW19K 951元 993元
T87/88次 北京西―貴陽 特快 RW19K 1202元 1257元
T97/98次 北京西―広州東 特快 RW19T
1399元 1447元
T109/110次 北京―上海 特快 RW19K 881元 921元
T157/158次 泰州―哈爾濱 特快 RW19T 1365元 1426元
T189/190次 北京西―南寧 特快 RW19K 1365元 1426元
T201/2/3/4次 北京西―三亜 特快 RW19T
2132元 2230元
T311/312次 瀋陽北―斉斉哈尓 特快 RW19T
606元 634元
T9201/9202次 蘭州―嘉峪関 特快 RW19T
487元 506元
T9203/9204次 蘭州―嘉峪関 特快 RW19T
487元 506元
K53/54次 北京―瀋陽北 快速 RW19K 529元 554元
K89/90次 北京西―呼和浩特 快速 RW19K 443元 462元
K179/180次 北京西―鄭州 快速 RW19K 457元 479元
K601/602次 北京―太原 快速 RW19K 393元 409元