Z列車とD寝台動車組の登場

動く星級ホテル

 04年4月に登場したZ列車は、夕発朝着の夜行列車を数段グレードアップさせた列車で、航空機のコンセプトを列車に持ち込み、通常の列車より多くの付加価値を備えている。編成にゆったり4人コンパートメントの軟臥車を多く連結し、始発から終点まで途中停車駅をできるだけ減らし、航空機の飛ばない夜間を上手く使った移動方法などはまさに“動くホテル”そのものだ。

Z列車の特徴

Z列車  中国鉄道部は、1000km〜1500km前後の中距離クラスにおける航空機との激しい競争に勝つために、夜間寝ている間に移動できる列車のメリットを最大限に生かした「夕発朝着」のダイヤを持つ、特快列車や快速列車などの夜行列車の配備を、大都市中心に進めてきたが、04年の第5回ダイヤ改正時には、この夜行列車をさらにグレードアップした列車を登場させた。その列車は直達特快と呼ばれ、頭文字の直(Zhi)をとって、Z列車という別称も持っている。
 内容として、
・始発から終点まで途中停車は一切なし※
・寝台は快適に眠れるように4名コンパートメントの軟臥が中心
・サービス向上のために、訓練を受けた若い服務員が勤務C軟臥車室内やトイレなどに服務員を呼べる緊急用電話もしくはボタンの設置
・切符は半年前からオンライン予約ができ、乗車10日前から購入可能
・団体20人で1人無料、さらに1人追加すれば、また1人無料が発生する団体割引制度(軟座車、軟臥車のみ)の設定と、競合相手の飛行機を充分に意識したサービス内容になっている。
    
 ダイヤは約8時間から19時間の間に設定されており、運行は全て夜間。そのため、出張目的で夕方乗車すれば、翌朝には目的地に到着しておりなおかつ宿泊代も浮くため、ビジネスマンにとって「仕事で使える列車」という地位を確立した。
 また列車服務員は2両分の業務を1人で担当し、そのほとんどは列車所属地方鉄道局から選ばれた容姿端麗な若い女性(もしくは男性)で構成されており、乗車中の丁寧な接客は中国鉄道のサービス向上を裏付けている。また乗車時、切符を見せるだけで、身分証のチェックや換車票の手続きは一切行なわれないため、発車してから邪魔されることはない。車内は日ごろから清潔を保たれており、女性2人旅でも他の列車より安全だ。

D寝台動車組の特徴

寝台動車組 寝台動車組
 D寝台は「はやて」などのCRHシリーズである動車組をそのまま寝台に換装した固定編成の電車寝台で、動臥とも呼ばれている。最高時速は200キロとなっており、同距離を走るZ列車より1〜2時間のダイヤ短縮が実現できるようになった。08年12月21日より京滬線の北京〜上海間に2往復、北京〜杭州間に1往復設定。そして、09年4月1から6月30日まで京滬線の北京・天津〜上海、北京〜南京・蘇州で走っていたZ列車からD寝台に全て置き換わる予定となっている。
 サービスはZ列車とほぼ同じだが、1編成担当乗務員の人数を減らしており、改札からホームに入れば、乗務員に切符を見せなくてもそのまま乗車できるようになった。

北京、上海を中心に多く展開

Z19次  Z列車登場時は、北京〜上海間の5本往復を中心にハルピン、長春、揚州、南京、合肥、蘇州、杭州、武漢(漢口、武昌)、長沙、西安、天津〜上海で運行が開始され、さらに07年のダイヤ改正では、北京から南通、南昌、福州と、武昌から上海方面へのZ列車が追加された。
 また、09年4月1から6月30日まで、新たに北京西〜西安・蘭州・長沙間と上海〜太原、上海南〜福州・広州東間にZ列車が追加された。また同期間中に、京滬線の北京・天津〜南京・上海間のZ列車は寝台動車組ことD寝台に置き換えられ、更なる利便性の追求を目指している。
 列車は軟臥車を中心に編成されており※、例えば北京西から長沙を結ぶZ列車では、18両編成のうち軟臥車17両+食堂車1両で料金は539元(軟臥下段)。この料金は中国人にとって決して安くないため低所得層は乗れず、乗客はお金を持っている人=ビジネスマンや外国人旅行者などが乗車の主流となってくる。そのため、切符は購入しやすく、本数が多く設定されている北京〜上海間では、通常期なら乗車当日でもほぼ買える。
 Z列車の編成は、カナダの航空機・車両メーカーのボンバルディアの合弁会社、BSPと中国(北車、南車)で製造された25T型と呼ばれる最高時速160kmを誇る長時間高速走行可能な2種類の客車と、時速170km以上出せる高出力機関車との組み合わせ。機関車にはトイレや電子レンジも備え付けられており、機関士は常に3人交代で運転を行なうため同区間を走る特快、快速と比べ、目的地までの所要時間を2〜10時間短縮させることが可能となった。また、Z列車を牽引する全ての機関車から客車への給電システムを備えているため、電源車は不要。その分、客車を追加連結でき、より多くの乗車が可能な隠れたメリットもある。
    
動車組集合  いっぽう、寝台動車組はベースとなった「はやて」ことCRH2の先頭車両を除く中間車両を4名1部屋の軟臥に換装。称号はCRH2Eとなった。16両固定編成のうち、寝台車13両、座席車2両、食堂車1両の構成。寝台車はBSP型25Tの内装をパワーアップさせた内容となっており、より使い勝手が向上したベッド周りの各ボタンや壁や通路の質感など、「さすが新型」と呼べる出来栄えだ。ただし、CRH2自体の天井が低い分、ベッドの上下間も客車に比べ10センチほど低くなってしまっている。また価格もZ列車と比べ、1.5倍高く設定したため、かえって敬遠反応してしまう乗客も少なからずおり、高速列車の価格設定のあり方に新たな問題を抱えることとなった。

円滑に運営させるための工夫

Z列車表示  このような高速列車の運転を円滑に行なうため、沿線では、踏み切りを減らして立体交差に改良していくほか、関係者以外は線路に侵入できないように沿線に強固な柵を作るなど様々な工夫が行なわれている。また、線形を改良することで、時間を短縮も行なわれている。
 このようにZ列車やD寝台は人の流れを活性化させる中国鉄道の顔として、今後も本数の増加やサービスの向上などますます便利になっていくことは間違いない。中国列車を体験したいという人には、切符が買いやすく、安全性が高いZ列車やD寝台の乗車が無難かも。