大秦線

誕生しない世界最長貨物

永定河上ですれ違う大秦線貨物列車
 
 しかしながら、中国以外の外国では日本が援助に関わった施設には日本の日の丸がはためき、英語とその国の言葉で日本に感謝する巨大な看板が置かれているが、中国ではそんな感謝の気持ちを表す看板は一切ない。また人民に向けた報道すら行なわず、あたかもCRH導入(第6次ダイヤ改正参照)のように、中国独自開発のようにうたっているため、日本人がそこに行っても、その施設の建設に日本のODAが関わっているということは、ほとんど分からないのが現状となっている。
 そして、日本でも国のODA公開が一般的でないため、どこに何を援助しているか知らない国民が大半だ。せめて日本人が納めている税金で建設された施設が外国で役に立っているニュースを報道すれば、国民だってODAの用途に関心を持ち、より中国と深いお付き合いができるというもの。日本人なら日本の資金援助と技術援助が中国鉄道の近代化を促進させていることに誇りを持ってほしい。
 
 話は変わるが、世界最長貨物列車といえば、通常はアフリカのモーリタニアを走る貨物列車を指す。これは鉄鉱石を積んだ貨車が200両におよび、牽引する機関車は3〜4両にものぼるのだとか。しかしながら、長さはともかく本数では圧倒的に大秦線のほうが上回っている。
 大秦線の輸送力は、驚くことに毎年5千万トンベースで増加しており、その背景には速度アップによるダイヤの短縮で、更なる本数の増加を予定しているからだろう。そして、新幹線路線と変わらない高規格路線で5重連もの電気機関車を200両の貨車編成に組み込まれ、時速80km/h近い速度で10分毎にやってくるその姿は、アフリカでのんびり走る貨物など到底相手にはならない。
 しかしながら中国側では大秦線を世界に向けて、世界一長い貨物列車とは全くアピールをしない。チベット鉄道開通のときと違い、かなり控えめである。ひょっとすると、大秦線は日本の援助で成り立っているという事実をヒタ隠していているのか?と、あらぬ邪推をしてしまう。
 

大秦線見学ガイド

 この世界最大の貨物列車、大秦線を手軽に見学できる場所は、2箇所ある。ひとつは北京北郊外、懐柔区の大秦線茶塢駅で、もうひとつは豊沙線の沙城から白タクで永定河を越えた山の中腹だ。
 茶塢駅は、昔旅客も扱っていたためホームがある。駅構内には、操車場があり、電気機関車に牽引された貨物列車がゆっくりと入ってくるが、とにかく長く、通過するのに20分以上かかるケースも。日本では味わえない現場での迫力を堪能しよう。ただしむやみに線路内には入らないように。
 アクセス方法は、東直門バスターミナルから公共バス942路が出ており、約2時間乗車後、終点の茶塢火車站で下車をする。目の前が大秦線の茶塢駅だ。
 
 沙城へは、北京西駅から普快列車が発車しており、乗車時間は約2時間。日帰り観光を楽しむなら行きは1483次(硬座、硬臥)、帰りの北京行きは沙城発K44次(無座)に乗車するのがよい。
 沙城からは駅前に白タクがたむろしているので貸切る。沙城から公道を南下。途中の永定河の橋を渡ってすぐ、右(西)に折れる。しばらく走って大秦線の高架と道路が交差する左手にワイン工場があるので、そこの手前を左折し、舗装された道を登っていく。ここからS字カーブになった大秦線が永定河を渡る光景が見られ、俯瞰撮影が楽しめる。料金は沙城駅との往復に2時間程度の撮影現場での待ち時間を入れても100元いかないはずだ。