切符を買うまでの過程と方法

目的地を決める

時刻表  まず、どこに行くか目的地を決めなければいけないが、中国を全く知らない人は、ガイドブックやインターネットでどこに行きたいか調べよう。そして目的地が決まったら、次に時刻表が必要となる。
 時刻表は中国の駅や大きな本屋なら大体売られており3種類に分かれている。メジャーな時刻表は『全国鉄路旅客列車時刻表』(10元)で、これは全国を走っている列車情報、料金、連結されている座席の種類が全て掲載されているほか(掲載忘れもあるが)、年2回の春と秋に更新される。
 次は、地方鉄路局管轄の時刻表。地方鉄路局が管轄している列車が掲載されており、4〜5元。最後は、駅のみの時刻表。その駅に停車する列車の始発と到着時間が掲載されており、料金は2元。日本なら、『全国鉄路旅客列車時刻表』が東京神保町の東方書店や内山書店で取り扱っており、値段は大体800〜1000円前後。
 また、お金のない人はインターネットで時刻表の検索も可能だ。
 代表的なサイトは中国語のOK旅行網

発車駅と終着駅を決める

 目的地が決まり、切符を買う時、現地の始発駅から買うことが原則となる。なぜなら、切符発売システムのオンライン化はされているものの、始発駅に全体の8割近くが集中しているため。これは軟臥車や高級軟臥車など、ランクの高い切符になればなるほど始発駅優先となる。
 また、途中駅でも切符の割り当てはあるが、切符全体の2割以下しか扱っていなく、さらに全体距離の3割より先の区間は無座切符しか扱っていないという駅も出てくる。小さい駅では機械発券こそされているものの、その駅からしか乗車できない無座切符を売るケースがほとんど。長く乗車するなら、乗車したらすぐ座席変更の手続き(補票)を行なおう。
 注意しなければいけないのが途中駅で下車する切符の購入。長距離列車が主体の中国鉄道では、始発から終点まで乗り通さなければいけない思想が強く、距離全体の8割以上を乗車する乗客に優先的に切符を発売するため、停車駅の少ない優等列車になればなるほど、途中下車の切符は売ってもらえない弊害も出てくる。
 例えば全長2000kmを走る特快列車に乗車する場合、軟臥切符は距離全体の8割乗車から発売、硬臥切符は5割乗車から発売、座席は3割乗車から発売と、見えないルールが決まっている。したがって、効率よく移動をしたくても、途中停車駅の多い列車しか買えなかった、という場合も起こりうるのである。

往復切符と異地售票について

 ここ数年、中国鉄道ではZ列車の登場や、D列車をはじめとする城際列車などの増加に伴い、往復切符なら誰でも買えるようになってきている。また、切符のオンライン化が進んでいる大都市の駅では違う場所で切符が買える「異地售票」という言葉を目にするようになってくる。具体的な例を挙げれば、北京で海南島の三亜から広州までの切符購入が可能ということ。そのため、うまくいけば、最初の始発駅で2〜3区間の切符を手にすることも夢ではない。
 もともと閑散期の乗車率を上げるために、中国鉄道部が取り入れた切符発売システムで、切符を管理するコンピューターには、駅ごとに復路用や異地售票用の切符がある程度確保しており、希望者がいれば発売してくれる。その際、1枚につき5元の手数料が発生する。
 しかし、切符を確保するといっても、長距離列車なら硬臥クラスの切符があてがわれ、城際列車なら座席クラスの切符があてがわれるが、もともと編成が少なく、ランクの高い軟臥クラスの購入は、Z列車乗車以外ではごくまれなのが現実だ。
 また、年間を通して買えない地域や、中国大型連休では始発駅における切符の需要が増すため、往復切符販売も異地售も停止してしまう。あくまで「買えればラッキー」程度に考えておいたほうがいいかもしれない。

切符の発売期間

 現在、列車切符は、全国一律で乗車日を含めた10日前から発売を開始する。例えば、1月10に乗車しようと考えているなら、乗車日を含め10日分日付を逆算すると、1月1日発売開始ということになる。城際列車などは駅によって、乗車日を含めた3〜6日前からでないと発売しない場合も多い。また、異地售と復路切符は乗車20日前から発売を開始する。特殊な列車である、国際列車は10日前から、香港直通の列車は60日前から購入できる。なお、大型連休の夏休みと国慶節、春節ならび兵役の交代が行われる11〜12月は切符発売日が5日に減らされる。

購入場所を決める

 列車切符を購入する場所は数種類あるが、発券する場所は、中国鉄道関連の施設に限定されるため、最終的には指定された場所まで取りに行くことになる。ただし、国際列車は駅では購入できず、CITSオフィスなど指定された場所でしか買えない。
 
售票庁 (1) 駅切符売り場…
 直接駅まで行き、購入する方法。駅で「售票庁」「售票大庁」「售票処」などと書かれた看板があればそこが切符売り場の建物。広大なホールには、巨大な電光掲示板が設置され、列車、クラスごとの切符の残数もしくは「有/無」が表示され、売れ行きがどんな状況になっているかひと目で分かる。
 そして、「售票窓」と呼ばれる窓口が数10箇所に設けられ、ガラス越しに座っている切符販売員と対面販売で購入する。切符はコンピューターで管理され、販売員がキーボードを叩き、画面を見ながら列車の切符残数を確認。切符は機械により発券される。切符があれば発券してくれるし、なければ「没有」(メイヨウ)のひと言で終わる。
 窓口には群がる人民の長蛇の列がいくつも形成され、閑散期はそうでもなくなったが、やはり混む時期は1〜2時間待たされることも。
 気をつけなければいけないのは切符販売員の休憩時間。仕事より休憩を優先するためか、どんなに人が並んでいても時間が来れば、窓口のカーテンを閉めてしまうこともしばしば。この辺が、列車の進歩にサービスが全然追いついていない中国鉄道のソフト面の限界なのだろう。文明化への道はまだまだ遠い。
 駅では「為了服務人民」(人民のためのサービス)が掲げられているが、半分以上は単なる看板で終わっている。ただ最近、田舎の駅でも親切丁寧な対応をしてくれる販売員も見かけるようになり、ここは個人のケースに任せるしかない。
 現在、発券システムはコンピューターで管理され、空き状況は各窓口の販売員のディスプレイに表示される。そして、欲しい切符をガラス越しの販売員に話せば、卓上のコンピューターで調べてくれる。全て機械発券で行なわれているため、1枚買うのに時間はかからない。
 他に、外国人窓口、軍人窓口、年寄り・病人・障害者優先窓口、値班窓口などの優先窓口が設置されているが、人民は見境なく並んでいる。そのうち外国人窓口に関してだが、あくまで“外国人に対し切符を優先で発売する”意味であって、販売員は英語が話せるか? となると、また次元の違う話になる。
 さらに、駅によっては、軟座、軟臥クラスのみの切符を購入できる「軟席售票処」切符売り場ある。同切符売り場は、駅敷地内の別エリアにあることが多く、こちらは並び待ちせずにすぐ買える。なかでも上海駅にある軟席切符売り場は親切丁寧に対応してくれることで有名だ。
 
(2) 場外切符売り場…
 市内の町中には中国鉄道マークの付いた「代理售票処」という看板が出ており、いわゆる駅切符売り場の出先と考えればよく、発券システムは駅と全く同じ。意外と目立たないので切符を求める客は少なく、こちらも並び待ちをしない。ここで購入する時、手数料として5元徴収される。大都市では一定の範囲内なら無料で切符を自宅またはオフィスまで届けるサービスも開始している。ただ地域によっては行き先が制限していたり、異地售票が制限されていたりと注意も必要だ。
 
(3) 現地の旅行会社…
 旅行会社には、鉄道切符販売部門と裏で繋がっている強みがあり、ピーク時どうしても買えなかった切符が、旅行会社を通したらすぐ購入できたエビソードがあるほど。手数料は切符の金額により1枚あたり30〜1000元。
 難点は、切符を旅行会社の人が代わりに駅まで買いに行く手間がかかるため、鉄道切符を取りあつかう旅行会社が多くないことと、短距離座席切符は料金が安いため断られる可能性もある。
 
(4) 日本の旅行会社…
 中国語が全く分からず、とにかく何が何でも乗車したいお金持ち向けの最終手段。実際は、日本での切符の発券は行なわれず、現地の下請け旅行会社を通して切符を購入するため、輸送費や手数料込みのため、発売額が現地価格の3倍以上、短距離座席は10倍以上も膨れ上がる。また、航空券やホテルの手配のセット購入を提示してくる旅行会社もある。
   そして、実際の受け取り場所は指定された現地の旅行会社まで出向かなければいけない規定も設けられ、結局時間とお金の浪費となってしまう傾向がある。

窓口で切符を買う

 いよいよ自分の番が来た時どうするか? 基本的に中国語必須なので、言葉に自信がある人はそのまま列車番号や行き先、日付、座席と欲しい枚数を切符販売員に伝えよう。ただし発音がしっかりできていないと、次のステップに進めない。
 日本人なら、紙に書いて渡すのもひとつの手。お互い漢字同士のお国柄、これなら販売員が聞き間違え、切符の誤発券を防ぐ効果がある。また、同じ区間に数本の列車が走っているなら、切符が売り切れの場合を想定して、複数の列車番号と座席の候補を準備しておいたほうが、その場で調べてもらえるため、購入できる確率はぐっと上がる。そして、切符があれば無事発券され、なければ「没有」で終了となる。支払いは全て人民元。外貨は基本的には受け付けておらず、クレジットカードも使えない。
 切符をまとめて買う場合、通し番号で発券してくれる。寝台車の4名コンパートメントの軟臥なら、4人で上段2枚、下段2枚を購入すれば、ひとつの個室をグループで占有できる。また、座席は隣同士になるように発券してくれるのだが、座席の配列により離ればなれになるケースも稀にあるほか、混む時期は、個室や座席がバラバラになることもある。
 切符は額面に書かれている同一の列車に乗車できる唯一の証明書なので、大切に保管すること。紛失しても再発行は行われず、再び最初から買い直すしかないのだ。  

○月○日
Z13次 去上海
軟臥下鋪 1張

紙に出発する日付と、列車番号と、目的地と、座席種類と、欲しい枚数(中国語で〜枚は〜張を意味します)をきちんと書きます。空席があれば切符は買えます。
 

外国人がスムーズに切符を買う方法

 中国語が苦手な外国人が列車切符を買う手段として、旅行会社を通す方法は少なくない。しかし、手数料をかけず、なおかつ自力で切符を買う方法を挙げるなら、優先候補として、まず駅にはむかわず場外切符売り場に行く方が無難。また、軟臥クラスを求めるなら軟席切符売り場に行ってみよう。やりとりは全て筆談だ。前者なら人が少なく並び待ちをしないため、時間のロスが減り、後者は軟臥切符が優先的に購入できる。またD列車、Z列車、特快列車などのグレードの高い列車や、料金の高い寝台切符も待たずに買える。
 また大きい駅の切符売り場には、外国人窓口(Foreign)もたいていあり、ここでは並び待ちが若干少ないため、販売員にパスポートを見せて、出発日や列車番号、目的地伝えてみよう。優先窓口だからひょっとすると優先で売ってもらえるかもしれないのだ。

自動券売機

自動券売機  近郊都市間を結ぶ城際列車では、切符販売効率を考えて、自動券売機を一時期大都市の駅に設置したことがある。タッチ式の操作で、目的地ならびに希望の列車と座席を選択し、お金を振り込めばお釣りと切符が一緒に出てくる。
 しかし、機械生活慣れしていない人民たちは買い方が分からず券売機前で混乱してしまい、かえって作業効率が悪くなったことと、券売機自体の信頼性が低く、壊れても修理せず、そのまま放置という状態が続いている。そのため、現在まともに稼動しているのは京津城際鉄路の北京南駅と天津駅、塘沽駅、広深城際列車の広州東駅にあるIC切符専用の自動券売機のみだ。

ダフ屋

 切符の需要は供給よりまだまだ高い。そのため、切符を求める乗客の心理をつき、一儲けしようとするダフ屋(黄牛)が各地で横行している。取り締まっても、取り締まっても一行に減らないのが現状だ。料金の目安は、切符の料金+手数料50〜200元。
 ダフ屋行為は違法なので切符売り場構内では警察が目を光らせており、ダフ屋とのやり取りが発覚すれば外国人でも逮捕は免れず、お金は当然返ってこない。またダフ屋によっては偽切符を発売してくることもあり(臨時列車の多く出る春運に見られる)、これが乗車中発覚して捕まる保証がないとはいえない。無視するのが一番だ。