切符の買える時期・買えない時期
中国人の休みは避ける

08年より、3日間に短縮された五一(ゴールデンウィーク)は長距離列車の切符は売り切れが減少したものの、城際列車などの短距離列車の売り切れが目立った。
また、春節の前後4週間を挟んだ帰省ラッシュ、ユーターンラッシュである「春運」はとにかく切符が買えない。発売期間も春節前後1ヶ月は、4〜5日前に短縮され、当然復路切符はおろか片道切符すら買えない状況が何日も続く。しかも駅の切符売り場は無座の切符しか扱っておらず、通常ダイヤの列車は指定された「場外切符売り場」でしか買えない。当然その切符売り場の前には100m単位の長蛇の列ができあがる。
仮に切符が買えたとしも、硬座や無座の場合、ホーム上には乗客が溢れ、列車が来れば硬座車に殺到。1車両あたりの乗車率は120〜150%を越え、車内状況は日本のラッシュアワー時の満員電車の比ではなく、立錐10時間という過酷なケースもある。
他にも、大型連休扱いにならないが、7月上旬から9月上旬までの夏休み期間、「夏運」と呼ばれる学生の移動が。さらに、12月中旬〜末には「兵運」と呼ばれる、兵員の移動が全国規模で行なわれる。なかでも軍の輸送は、硬座車や硬臥車を団体で貸し切るため、硬座、硬臥のほとんどが買いづらくなる。
これらの事情を考慮すれば、大型連休中は無理せず旅行自体を避けるか、旅行会社を通して切符を購入する方が手配しやすい。ただし春節だけはどうにもならない場合がある。
買いやすい切符
それでは、切符の買いやすい時期はいうと、上記以外の期間なら特殊な地域を除けば買えないことはない。また西暦にあたる1月1日の新年は、中国人にとって生活習慣に関わるイベントではないため、問題なく購入できる。混んでいる時期、片道切符でもいいという人には春節当日前後が狙い目。春節当日は中国人にとって故郷や家で家族と一緒に過ごさなければいけない習慣のため、列車内で新年を迎えることは喜ばしいことではない。そのため、大晦日、春節当日、春節2日目のほとんどの列車内はガラガラで、当然寝台切符も楽に買える。
ただし、春節3日目からユーターンラッシュが始まるため、次の移動する切符を確保していなければ、当然足止めを食らうので、油断しないように。
北京エリア
・北京〜上海(D列車3本、Z列車3本、特快2本、普快1本)軟臥車編成のZ列車を中心に、優等列車が充実している。閑散期なら当日でも購入可能。
・北京南〜青島(D列車6本、特快1本)、北京南〜済南(D列車4本)
・北京〜瀋陽北(D列車6本、快速1本)
D列車が6本走っているのは魅力。また長春やハルピン行きのD列車も瀋陽北でほとんど停車するため、平日なら買えないという心配はない。
・北京南〜天津(京津城際鉄路・C列車49本)
10分置きに発車しており、駅に着いて1時間以内に目的地に到着が可能となった。
・北京西〜石家庄/邯鄲/鄭州のD列車を含む城際列車。
・北京西〜武漢(D列車3本、Z列車4本)
行き先が、漢口と武昌に分かれるが、Z列車なら前日までなら購入も容易。また長距離列車のほとんどは武漢に停車する。漢口と武昌の間は公共バスが走っている。
上海エリア
・上海〜南京のD列車と特快。合計50本近くが毎日発車しており、ほとんどは重連の16両編成。・上海南〜杭州/義烏/金華西のD列車、上海南〜寧波の特快。上海〜北京、上海南〜武昌のZ列車。
・上海〜香港九龍(隔日運転)の軟臥車が買いやすい。
広東エリア
・広州から深セン/香港地区を結ぶ城際列車が1日最大120本運行(通常86本、予備34本)しており、特に深セン往復は駅に着いて切符を買って乗るというスタンスが確立している。また広州〜韶関行きの城際列車も1日5本発車している。買いづらい切符
チベットエリア
06年7月に開通して以来、列車でチベットへ行く人は後を絶たず、厳しい状況が続いている。とりわけ、一番距離が短い西寧〜ラサ間の列車では、団体ツアーが多く寝台席を押さえてしまうため、競争率がもっとも高く、軟臥は窓口では発売していない。また、外国人旅行者は窓口で買う際、チベット入境証であるパーミッションの提示を求められることもあり、前もって書類の準備をしておかないと個人での購入はとても無理。素直に旅行会社を通して、列車切符、パーミッションなどを一括して予約した方が買いやすい。ただしシーズン中の手数料は1枚1000元を越えるケースもある。例外として春節のお休み期間中は空いている。
四川・重慶エリア
四川省の成都と重慶は周りを峻険な山々に囲まれており、交通の便は極めて悪く、列車本数も北京や上海と比べて圧倒的に少ない。また、人口が豊富な同地域は、民工(出稼ぎ農民)の排出地としても有名で、北京や上海、広州へ向かう切符の需要が高く、発売開始と同時に寝台(硬臥)切符があっという間に売切れてしまったという事例も。10数年以上前から同地域は旅行者たちの間で、「一度入ったら抜けられない町」というレッテルを貼られており、それが今でも続いている。また反対に、北京や上海から成都、重慶へ行く寝台切符も早々売り切れが続出し、特に軟臥切符は一種のプレミアムチケットと化している。
新彊シルクロードエリア他
長い時間をかけて、ウルムチへ向かう列車も比較的買いづらく、夏のシーズンなど寝台切符が早々と売切れてしまう。ウルムチから東部へ抜ける列車も一緒。切符発売制限
ごく僅かな例だが、高級軟臥や軟臥など特定の切符の発売を抑えることによって、低グレード客車への乗車率を上げよういう悪意に満ちた行為が駅ごとによって行なわれている場合もある。切符販売員にも理由は知らされていなく、なければ「没有」の一点張り。しかし、そういう状況になっても、慌てず騒がず、乗車日前日や24時間前を切ったタイミングで購入を求めると、あっさり買える場合もある。最後の手段、高速バス

そのときは、ちょっと列車からは反れますが、高速バスを使うという手段があります。
中国の高速道路網の発展はすさまじく、全国の地図をみると、ほぼ開通しています。都市と都市の間には必ずといっていいほど高速バスが走っている可能性は高く、手段を移動と考えている方には、逆に列車よりもお勧めできます。
本数が多ければ、10分に1本は出ています。ずっと高速道路の上を走るなら、城際特快に負けない速さで移動します。
車内も綺麗で、バスによってはビジネスクラス並みのシートピッチのある座席を用意してくるバスもあります。また水1本分のサービスを行ってくれるバスもあります。
本数が多い分、料金は高めで、例えば上海南⇔紹興間だと城際特快軟座は57元ですが、バスですと80元もかかります。ただ料金が高い分、乗客は乗ってこないので、常に満席ではありません。
高速バスが発車している場所は、地図上ですと○○長途汽車站(バスターミナル)と書かれていれば高速バスはあります。しかし市内によっては何箇所もバスターミナルがありますので、何処発のバスターミナルのバスは何処までいくという状況をしっかり事前調査しておかなければいけません。
駅前などから客引きバスがありますが、これはいわゆる白バスの確率がかなり高く、お勧めできません。また夜行バスは荷物の盗難などの安全上に問題があり、これもお勧めできません。
以上で中国鉄道の切符システムを説明しましたが、いかがだったでしょうか?
ヨーロッパに旅慣れている方や、来たての中国駐在員だと中国鉄道の切符システムを甘く見がちですが、ここを押さえておかないと、あとで大変な目に遭います。
“中国の鉄道切符システムを押さえる者は、中国での生活リズムを押さえる”
大げさに見えるかもしれませんが、私にはこの格言はぴったりと当てはまると思います。ひとりでも多くの方が、この切符購入方法を理解していただき、快適な中国旅行をされることを望んでおります。