チベット鉄道の乗り方

現在の運行状況

  チベット列車はT27/28次北京西発とT164/3次上海発のみ毎日運行。それ以外の列車は隔日運行扱いとなり、事前の運行日の確認が必要。蘭州・西寧発以外は、距離が3000kmを越ええる長距離列車となり、最長はT263/4次の広州〜ラサの4980 km。また乗車時間も48時間〜57時間と非常に乗り応えがある。
列車番号
区間
距離
時間
備考
T27/28次北京西〜ラサ4064km約47時間毎日運行
T163/4/5/6次上海〜ラサ4373km約49時間広州発と隔日運行
T263/4/5/6次広州〜ラサ4980km約57時間上海発と隔日運行
T21/2/3/4次成都〜ラサ3360km約45時間重慶発と隔日運行
T221/2/3/4次重慶〜ラサ3654km約47時間成都発と隔日運行
K917/918次蘭州〜ラサ2188km約28時間西寧発と隔日運行
N917/918次西寧〜ラサ1972km約26時間蘭州発と隔日運行

乗車の方法

穂蔵鉄路票

切符購入編

 チベット鉄道の切符は乗車10日前から発売だが、D列車やZ列車とは状況が違い、5月から10月にかけてのシーズン中は、自力での購入はほぼ不可能。理由として、外国人は「パーミッション」(入域許可証)の取得が切符購入の前提となっているほか、旅行会社と鉄道部のつながりが強いため、競争率がとても高く、素人はもちろん、旅慣れたベテランすら苦戦するのが現実だ。

 
パーミッション  まず、パーミッションは、チベットに入る外国人にとって必須の入境証で、これがないと、チベットに入れないどころか列車に乗車できなかったり、ゴルムドで降ろされたりする。また、外国人がチベット自治区観光局の国内外駐在事務所に直接赴いて個人パーミッションの申請をしても許可は下りず、必ず中国国際旅行社(CITS)などの旅行会社を通してガイド、送迎車手配と同時にパーミッションを申請することになる。ただ、ガイドと送迎車手配の金額が予想以上に高く、旅行の出費において最も大半を占めてしまう。
 それでは出費を抑えるために、パーミッションなしでもチベットに行けるかというと、仮にチベット自治区内で無携帯が発覚すれば、罰金や強制送還、挙句の果てに数年の中国入国禁止の措置を受ける危険性もある。人によっては、全く見せることもなかったという例もあるが、万が一のことを考えて、持っておくに越したことない。パーミッションは1枚の用紙でも複数の名前が書けるため、グループなどで申し込めばその分の個人負担が軽くなる。
 またチベットを観光する上での注意事項として、チベットは原則的に外国人の自由行動は許されていない。パーミッションを取得しても、ラサやシガツェなど、一部の対外開放地区が自由行動の対象となり、それ以外の「非解放地区」に行くためには、「外国人旅行許可証」という別のパーミッションが必要となる。これを持っていない場合、最悪逮捕・強制送還のケースもありうるのでくれぐれも油断しないように。
 09年1月現在。パーミッションは原本ではなくコピーも可能となった。ただし、ラサ市内でホテルにチェックインするときは、パーミッションの原本とコピーを両方提出しなければならず、なおかつ付き添いのガイドもホテルに登記しないとチェックインできない。
 
 シーズン中はパーミッションが発行して、ようやく切符購入が可能となる。また、冬季のオフシーズンはそのまま窓口で中国語伝えれば、自力購入も可能となった。
 5月から10月にかけてのシーズン最盛期は、団体ツアー客の利用率が高く、旅行会社が座席のほとんどを押さえてしまう場合もある。特に西寧〜ラサを運行する列車は距離が短いこともあり、競争も熾烈。そのため、手数料は高いが信頼の置ける大手旅行会社に頼むことがベターな方法だろう。
 チベット鉄道で使用する座席タイプは、軟臥、硬臥、硬座の3種類。2段ベッドの4名コンパートメント寝台である軟臥は編成数が少ないため、入手は困難なものの、編成車両が多い3段ベッド6名セミコンパートメント寝台の硬臥が買いやすい状況だ。また、座席である硬座は安い分、快適な居住性とは言えず、乗車30時間の移動は正直外国人旅行者にはお勧めできない。
 
 年間を通して人気が高いチベット鉄道だが、11月から3月にかけての冬季と新暦の元旦、また中国人が一斉に帰省する旧正月の春節期間中は空席が目立っており、外国人旅行客にとって一番のねらい目でもあるシーズンだ。うまくいけば当日乗車も夢ではない。
 準備期間として、乗車1ケ月前に旅行会社でパーミッションと切符の同時申請を出しておくことが、チベット行きの手続きが一番スムーズに運ぶ。また、旅行初心者のチベット鉄道に乗車をするための最良の方法は、大手旅行会社のツアーを選ぶという手もある。人数が増えることによりパーミッションの個人負担額が減るほか、切符と宿泊先の確保を代わりに行ってくれるからだ。
 
 あと、日本からチベットを旅行する場合、見落としがちなのが中国ビザ。今までのところ中国では入国2週間以内ならノービザでも滞在可能だが、高山病にかかった場合、現地の病院での入院や、下山してからの入院など、予想外の場面で足止めを食らうことになる。このとき、ノービザの場合、滞在期限を過ぎてしまう可能性は高く、重い処罰も課されるケースもある。そんなトラブルを防ぐため、あらかじめ、最低1ヶ月のLビザ(観光ビザ)を取得したあと、パーミッション、切符の手配を行った方が安全コースだろう。
 
★パーミッション申請に必要な資料
  • パスポートネーム
  • パスポート番号
  • パスポートに記されている生年月日
  • パスポート有効期限
  • 職業名
  • 職業内容(自己申告OK、出来れば名刺のコピーも)
  • チベット内で全日程ガイドをつけることが条件
  • 車両ガイド篇

    中国南車25T型進蔵  チベット鉄道で使われる車両は、「25T型進蔵」という新型車両で、BSP(カナダ・ボンバルディア)と中国南車四方製(中国車両)の2タイプがある。外見の区別の方法は窓枠と屋根で、屋根が空調機材と一帯化しており、窓枠が細長ければBSP。屋根に空調機材が目立ち、窓枠が正方形なら中国車両となる。緑皮車と同じダークグリーンの車体に2本の黄色を纏った端正なその姿は、他の中国車両と違い全体が引き締り、Z列車などで使用される25T型とはひと味違うオーラを放っている。ただし、車内はBSPより中国車両の方がやや広い。
     同車両は、低気圧と酸素が薄い標高4000m以上の高地に対応した密閉構造を持つ特殊改造車。各車両の1ブロックに「与圧式」と呼ばれる酸素、気圧制御装置を設置することにより、車内の気圧を地上の75〜80%の状態に保たせることで高山病の発生を抑えている。
     また通路やベッドなどの数箇所には、酸素供給口も設置されており、気分の悪くなった乗客は乗務員から配られた酸素チューブを供給口に差し込み、酸素を直接吸い込める。さらには、車両の隅々まで密開式の風防ルームを設けているほか、ガラス窓は紫外線対策として二重窓構造にもなっている。
     
    T264次  また、各車両のデッキ口の通路上には、LED電光表示機が設置され、中国語、英語のほか、チベット文字で車内の温度、列車の時速、高度、到着駅情報などが表示される。また、車内の各所の案内表示もすべてこれら3言語で表記されている。
     気になる車内のトイレは、航空機と同じ真空フラッシュ装置を採用。車両下には集便タンクが設置され、沿線に排泄物の垂れ流しをさせない仕組みとなっている。また一部の硬臥車には身体障害者用も用意。使い勝手が向上していることも見逃せない。そしてすべての車両に、共用の洗面台、ゴミ圧縮機、給湯器が1カ所ずつ設置されている。さらには、車内の通路やコンパートメント内にはコンセントプラグ用の電源もついており、ノートパソコンの利用や携帯電話などの充電ができとても便利だ。もちろん全車両エアコン付きなのはいうまでもない。
     車両は、電気機関車から直接電気供給を受けられるシステムが整っているものの、非電化となる蘭州からラサまで25T型の電源車および荷物車が連結される。標高の高い地域で、牽引機関車が故障した場合、電源車がなければ、乗客はすぐに生命の危機に立たされるからだ。
     牽引機は各都市から蘭州まではSS7E型やSS9G型の電気機関車が担当。蘭州からゴルムドまでは日本の特急列車をほうふつとさせるカラーリングを纏ったDF4Dディーゼル機関車の重連が牽引。そして、ゴルムドからラサまでは、アメリカGE製のNJ2型が重連ないし3重連で牽引する。
     
     チベットに行く列車は何処始発でも同じ編成になっており、基本合計は15輌編成。総乗員は936名。
     N917/8次の場合…電源車+硬臥(4)+軟臥(2)+食堂車+硬座(4)+硬臥(4)+荷物車
     
     硬座 YZ…一番安い座席車両。10数年前までは当たり前だった、中国鉄路苦行専用車両も改良に改良を重ね、随分快適となったが、ラサまで要する30時間弱の乗車はオススメできない。定員98名の詰め込み方式は相変わらず。座席の下に酸素供給口が設置されている。乗客のほとんどは蘭州、西寧からの出稼ぎ労働者およびチベット族、僧侶などが多い。
     
     硬臥車 YW…チベット鉄道で使われる、スタンダードな寝台。3段ベッドを向かい合わせた6人用1ブロックのセミコンパートメント。1車両10ブロックで構成され、定員は60名。ベッドの上下段および奥行きは狭く、身長175cm以上の人には中段と上段は頭がつかえるのでちょっと息苦しい。荷物の置き場はベッド上段の通路側にある。電源は各1ブロックおきに配備され、タコアシがあれば、周囲の乗客から重宝される。
     下段ベッドは上下空間こそ確保されているものの、昼間は他の乗客に占領される場合もある。上段ベッドは昼寝の場所に最適だ。夜22時を過ぎると強制消灯になる。なお、中間車両に組み込まれている硬臥のトイレにはバリアフリータイプもある。ツアーでは、軟臥切符が買えない場合、硬臥車両に乗車を変更する場合が多い
     
     軟臥車 RW…チベット鉄道で使われる、A寝台。2段ベッドを向かい合わせた、4人用1ブロックの扉付きコンパートメント。1車両8ブロックで構成され、定員は32名。硬臥に比べ、ベッド周辺の空間はたっぷり。特に、下段ベッドの幅は従来の軟臥よりも5センチ奥行きがある。個室上段ベッドから通路の上に奥行きがあるので、荷物はそこに置く。
     各個室のテーブル下には電源があり、また各ベッドの通路側には液晶モニターが設置され、好きなDVD映像をチョイスできる。枕位置に設置されているライトは3段階の光調節が可能。また同じ箇所に酸素供給口も設置されている。
     料金は他のグレードの客車に比べ最も高く、価格も1000元を越えているのがほとんど。しかし、2両しか連結されていないため、シーズン中、最も手に入りづらい切符となった。客層は個人もしくは2人で移動する乗客が多く、またツアー客の占める割合が最も高い。トイレおよび洗面所は車両の端に通路を挟んで2箇所設置されている。

    健康管理に注意

     チベット鉄道は、空気が薄くなる標高4000mを走行中でも車内でも普通の生活ができるように、特殊改良を加えた車両を使用している。
     しかし、すでに乗車した人の話によると、気圧制御機器が稼動しているとはいえ、ゴルムド以降、高度のため気分が悪くなる乗客も少なからずおり、なかには吐き気や目眩を訴え、頭痛で起き上がれない高山病の症状が現れるケースも稀にある。
     そのため、無謀な乗車を防ぐため、チベット鉄道では乗車の際、自己申告制の健康カード記入を義務付けており、記入を怠ると乗車拒否に遭ってしまう。
     
    健康カードの裏面には以下の症状を持っている方は列車に乗車できないと書かれている。
  • 心臓病
  • 高血圧
  • 各種の血液病、脳血管の疾病
  • 呼吸系の疾病、肺の疾病、気管支喘息、気管支の拡張、肺気腫、活動性肺結核、塵の肺病
  • 糖尿病
  • ヒステリー、てんかん、精神分裂症
  • 上部呼吸器感染
  • 体温は38℃以上
  • 妊婦

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    まあ、あくまでも自己申告ですし、車輌の乗務員はチェックできるわけが無いので、自分のカラダに何も異常が無ければ問題がありませんが、常日頃から健康管理に気をつけておけば憂いは無いでしょう。

    いつ出る? 幻のプレミアムトレイン

     09年1月の時点では全く実現していないが、2007年7月から5つ星クラスの豪華観光専用列車(プレミアムトレイン)を投入すると発表しており、北京の各旅行会社に案内のチラシが出回っていた。列車名は”タングララグジュアリートレイン”と命名され、運行系統は北京〜ラサと北京〜大理の2本。
     料金は、中国の列車では最高1泊1000米ドルになるといわれており、価格だけなら世界でもトップクラスに入る。
     ひと月に5〜8本運行する予定となっており、乗車運賃は基本的に片道のみ。1回の行程が3泊4日となる。しかし、何らかの発表がない以上夢物語で終わる可能性もある。
     この豪華列車は4面ガラスばりの展望車、カラオケや民族歌舞を表演するシアター車も連結され、また、高原の強い紫外線を防ぐため窓ガラスは防護フイルム貼り、医療設備も整えてある。1人部屋も用意しているという噂の豪華コンパートメントはシャワー・入浴設備、バーター(執事)制度ありとホテル並みの設備を誇る。内装は豪華でモダンながら、沿線の民族情緒を織り交ぜたデザインだ。
     車内には2系列の空調設備があり、酸素の濃度を23%高めるほか、独立した酸素吸引口も設置。また気圧も適度に増圧され、高山反応対策も万全。重要な観光ポイントでは10分〜15分ほど停車して乗客はホームに設けられた特製の駅舎の中から写真撮影をすることができる。
     列車の発注価格は1編成7億人民元といわれ、トータル乗客数100名および最高時速160キロ出す台車を供えている。料金は上記の通り普通の観光客は利用できない高額な値段だが、中途半端な設備と値段が高いだけではプレミアムなんぞつかない(笑)。