乗車された方のレポート

実際の乗車は? 西寧−拉薩間乗車雑感 [レポート:全日中様]

北京西駅で発車を待つT27次ラサ行き[提供:はいらーある様]私が乗車したのは(2006年)7月15日の西寧発のN917次の硬臥でした。
硬臥と言っても新造と云う事もあるのか思ったより快適で、また天気も予報が外れてくれてそれなりにいい天気でした。
通常15両編成なのですが西寧出発時になぜか最後尾に1両増結されており(笑)しかも厳重にその車両付近はガードされておりましたので政府関係者なのでしょう。
さて、鉄的&旅行者的観点から見て気づいた事を少し書きたいと思います。

言われていた観光停車は無かった

それどころかN917次は新線区間で4駅停車するのですが那曲でのみ外へ出るのが許されたと云う具合でそれも服務員に複数の中国人が詰め寄って実現したと云う塩梅でした。また世界最高駅の唐古拉山口駅も上りのT28(ラサ→北京)は当方と交換待ちで結構長い事停まっていたようですが、こちらはスルーに近い状態でした(泣)

チケットの発売状況

軟臥通路[提供:はいらーある様]現在(06年7月)、北京、成都、重慶、蘭州、西寧発のいずれも団体扱いはしていません。と云う事は旅行社を通じての事前予約も非常に厳しいのが現状です。
そうなると駅売りで買うしかないのですが、はっきり申し上げて駅にいきなり行って買えるものではありません。私が西寧で聞いた話では出発の5日前に当該列車の発売があるのですが、寝台は一人2枚、座席は一人3枚までと制限がある上に、チケットを買う為に前の日の午後または夕方位から現地旅行社の社員が何名かで徹夜をして購入しているような状況で、その列自体は500メートル位になる日もあります。
こう云う状況で駅で徹夜と言うのは治安や安全の面からも絶対におすすめできませんし、また駅売りで軟臥(A寝台)は1枚も発売されなかった日も結構あるそうです。蘭州からの情報ではパーミット(チベット入境許可証)がないと購入できないと云う情報もあります。
現実問題としてどうするかと言えばこれはだめもとで旅行社にお願いするか、個人で強力なコネを探してやるしかないように思います。
 
なおラサ発だと比較的予約できるのではないかと云う話も出ておりましたがチケットが余りにも取れないのでラサ発の列車を予約する方にシフトする団体も増えておりますのでこれとて万全とは言えません。実際に駅で出発する風景を見ていたり、途中で通過するラサ発の列車を見てるとどれも硬臥まで満員です。

車両について

列車編成なのですが、前から
機関車[ゴルムドまでは重連、以降3重連]+荷物車+硬臥車+硬座車+食堂車+硬座車+軟臥車[2両]+硬臥車+電源車
の順で繋がっています。
 
一応5号車に医務室があるのはありますが、看護士さんとかが乗っているかは未確認です。また13号車にはバリアフリートイレが付いています(驚)。
各車両の端に電光掲示板が付いていて、中国語(普通語)、英語、チベット語で現在の標高、運転速度が表示されます。ただどう云う仕組みになっているかはわからず西寧を出発してしばらくはずっと2230メートルでした(笑)。あとその速度計を見ていると新線区間では最高時速97キロと云うのがありました。最低は92キロでしたから恐らく95キロ程度で走れと指示が出ているのでしょう。

硬座[提供:はいらーある様]洗面所[提供:はいらーある様]

酸素供給設備について

軟臥の酸素供給機[提供:はいらーある様]ゴルムドからは確かに禁煙のようですが(一応全区間禁煙のようですがゴルムドまではうるさく言われないようです)デッキに灰皿がついています。
それ以降は密閉のはずですが、なぜかトイレの窓は開けようと思えば開くので(実際は開けっ放し)用を足しに行って息が切れそうになった方もおられました。
ちなみに配電盤が各車両にありまして見てみると車内温度は22.8度に保たれているようです。
 
また寝台車であれば下段、また廊下にも酸素供給のノズルがありまして服務員からホースみたいなのが各人に配られますので必要な人は各自使用します。もちろん座席車にもあります。
ただ極端に今回は具合が悪くなる方はいらっしゃいませんでした。

車内食堂事情

食堂車[提供:はいらーある様]青蔵鉄路が他の中国の長距離列車と決定的に違うのは私は食堂車が混雑している事だと思います。事前に聞いてはいましたが車中で3回共食堂車で食事と云うのは難しいと云うのは本当でした。
 
お客様より「これだけ乗っているのに食堂車が1両しかないのはどう考えても足りない」と云う意見を複数の方から頂きましたが、確かに40席程度しかない上に中国人団体客も積極的に食堂車を利用するので慢性的に混んでいます。
乗ってすぐガイドが食堂車に行き、朝食と夕食は食堂車で食べれるように時間を決めて手配してくれて代金も先払いしたのに時間に行ってみると満席・・・・・。仕方ないので少々待って席が空き次第座って頂きました。ただ回転自体は早いです。
 
さて注文の仕方ですが、食堂の服務員は客車以上に英語が分からないようです(苦笑)。メニュー表もないしガイドに聞いてみると予算を告げてそれの予算に応じてある食材で料理してもらうとか。大体@40元位らしいです。なので会話集等持ち込んで「あれと同じもの」と云うのはこれも少々難しいのではないでしょうか。朝食は「セットメニュー」ぽかったですが。
味は私もお客さんもおいしく頂いていました。内容は大体炒め物が多かったですね。
 
また弁当の販売もあります。メシ時になるとワゴンが回ってくるのですが安い時で15元位ですが、20元の時もあります。なお以前よくあった「中華丼」みたいな弁当でなく、ご飯とおかずが別になっているのとプラスチックの容器なのでコンビニ弁当みたいでした。
 
それから食堂車内のカウンターバーですが確かにありますがむかし「あさかぜ」のロビーカーにあった売店みたいなものでバーとは言えません。でも大抵そばに食堂の会計をしてる武装警察の職員がいるので買うのには困りません。ミネラルウォーター1本2・5元、ビール大瓶(並べてあるのはロング缶)5元、カップ麺1個5元でした。そのほかにワインも置いてあります。
中国の列車らしく給湯器は各車両にありますのでカップ麺を朝から食べてる人も多かったですし、私はコンソメスープを持ち込んで飲んでおりました。
★T27次食堂状況 [レポート:はいらーある様]

食堂車の従業員[提供:はいらーある様]食堂車の利用者は確かに多かったです。行ってみると満席ということもしばしば。中国の食堂車は行ってみるとガラガラということが多いのですが、ラサ行き列車はほとんどの乗客が観光客ということで、食堂車を利用できるような裕福な層が多いのでしょうね。
食堂車のメニューなのですが、これは飾りのようなもので、実際にはバーカウンターにいるウェイトレスから、手書きのその日できる料理の書いてある手書きメニューを見ながら注文し、食券を買うというシステムになっています。
メニューのレパートリーが日を追ってどんどん少なくなっていくのはご愛嬌。
 
朝食はおかゆとゆで卵、ザー菜の中餐が10元。ハムエッグとトーストの西餐が20元でした。
ちなみに食堂車のウェイター、ウェイトレスの衣装はチベットを意識した他では見かけないデザインで、中国国鉄がこの列車にかける意気込みが伝わってきます。
2泊3日。朝昼晩、交代なしに全て同じ職員が働いていたのは驚き。普通の食堂車の何倍もの乗客を高地で接客するというのはかなりの重労働でしょう。

車窓について

新線区間での車窓ですが、大変珍しいものがあります。
ゴルムドを発車してから40分から1時間位しますと進行方向左手に6千メートル級の山が見え始めるのを皮切りに草原の向こうに高い山と云う感じが続きます。
また殆ど夏は全線草原地帯を行くと言った感じで、放牧されているヤクや山羊、牛などをのどかに見ながら列車は進みます。

沿線の様子チベットに向かっている線路[提供:はいらーある様]

永久凍土地帯を行くと云う触れ込みだったのでツンドラが見えるかと思いきやそれはなかったです。また長い鉄橋があると聞いておりましたが、鉄橋と云うよりか「高架」に近い感じで、それもちょっと思っていたものとは違うようです。
 
残念なのは下り(ラサ行き)の場合ですと成都・重慶発はゴルムド発が朝4時なので前述の出発して1時間程度の辺りの景色のいいところが見えないのと蘭州・西寧発は夏の日が長い時でも羊八井辺りからの標高7千メートルの山が丁度夕暮れ時に当たるので見えにくいと云う事です。

撮影について

アメリカ製GE[提供:はいらーある様]北京発、蘭州・西寧発はゴルムドでかなりの確率でホームに降りれますので機関車付け替えを撮影されてもいいと思います。ただ自分の車両でないところから時間的余裕がなくて乗る場合に備えて「乗車証」(キップと引き換えにくれるキャッシュカードのようなプラスチック製のカード)は必ず持って降りましょう。
その他はカーブに差し掛かったところを車窓越しに撮影する位しかできないのが現状です。しかし3重連でもあって編成が非常に長いので少々苦労はします。
 
後は穴場的には翌朝ラサ駅で撮影と云うのが面白いです。西寧辺りではラサ行き列車は駅に入る時から既に専用入り口になっており、見送り客も厳しく制限されているので駅での撮影のみは事実上不可能ですが、ラサは列車自体が物珍しいので見物客が多く、入場券で割りに簡単にホームまで行けますので明るいうちに撮影できます。ただやや逆光なので注意して下さい。

気づいた点

・貨物列車には新線区間では1回もすれ違わなかったが、前日青海湖付近で撮影していたら午前中数本ゴルムド方面へ向けて貨物列車が走って行ったのを見た。貨物列車は旅客列車とは違い、なるべく有効時間帯に新線区間を走るようにダイヤ設定がされているのでそれですれ違わないのではないか。また貨物駅はラサ西駅と云う駅が貨物ターミナルとしての役割を持っているらしい。
 
・お土産だが八角街の土産物屋で「西蔵鉄路全線開通 2006年7月1日」とバックプリントされたTシャツ(1枚40元、M〜XXLまでサイズあり)を買った。またラサ空港出発ターミナル売店にレリーフのようなもの(1個420元)や記念切手セットを売っていたのを見た。売店で粘っていれば向こうも商売なので関連の雑誌やら戸棚から出してきた(笑)。車内では乗車記念グッズは一切販売していない。
 
・なんていうのか運転形態が「田舎の路線バス」みたいな感じがする。ちゃんと時刻表はあるけど予定された駅に早着早発はあたり前のようにあるし、ラサにも15分早着した(大笑)
 
・ラサに着いてからが大変でホテルは足りない、ガイドは足りないで現場は結構ばたばたしている。ポタラ宮値上げの件は来年ではなく今年からやりたいと言っているのを聞いた。

チベット鉄道運行の今後

拉薩駅[提供:はいらーある様]この試運転ですがとりあえず11月で一旦終わると云う情報があります(西寧で聞いた)。
11月以降はそのまま試運転するのか、春まで立山黒部アルペンルートみたいに休止するのか、はたまた春節時期だけ運転するのか定かではありませんが。
 
現地に問い合わせたところ、青蔵鉄路の運転の終わる時期はまだ正式には決まってなく12月に入ってからの運転や逆に大雪等降った場合は11月でもおしまいにする可能性があると言われました。さすがです(苦笑)。まあ中国に限らずオフシーズンは間引き運転と云うのはどんな乗り物でもありますので仕方ないと言えば仕方ないのですが。

ラサの観光状況

さてポタラ宮ですが現状ではこれも入場がかなり厳しくなっています。
元々ポタラ宮は1日に2300人しか観光客を受け付けないというシステムになっており、それも前日に予約をしてその指定された時間に行かないと遅れたら入れてもらえません。つまり個人でポタラ宮に行って「大人1枚」で入れるものではないのです。
 
事実私達の団体の入場時間が決まったのは前日の午後9時で、実際はその予約証に書かれた時間に合わせて窓口に行き、それで人数分のチケットをガイドが買って入場と云う段取りです。
 
また鉄道開通により、余りにもチベットに来るお客さんが増えすぎてポタラ宮のキャパシティーは遥かに超えている状態でして最高で1日1000名の観光客がチケット購入ができず、入場できなかったそうです。 入場料300元の値上げですが早ければ8月1日から値上がりする可能性もあるようです。
 
長文失礼致しました。
 
※管理人より:全日中様、はいらーある様、情報提供有難うございました。

内緒にしておけ

洒落にならない記事がありました。100%信用できるか分かりませんがこれが現実かもしれません。
 
中国−チベット間に今月1日開通の「青蔵鉄道」、問題続出 中国青海省ゴルムドとチベット自治区ラサをつなぐ「青蔵鉄道(青海チベット鉄道)」が今月1日に開通してから、早くも問題が噴出している。
中国紙・新京報(28日付)によると、半永久凍土を通る線路の基礎の一部が沈下したり、コンクリートの構造物や橋の表面に亀裂が走って劣化が始まっているほか、砂塵(さじん)被害が予想以上で、安全性の脅威となっている。野生動物の線路進入もあとを断たず、事故の原因になりかねないという。
 
氷の粒を含む半永久凍土帯が夏の気温上昇とともに若干緩み、路盤を不安定化させる問題はかねてから指摘されていたが、アンモニア水を充填(じゅうてん)した鋼鉄棒を線路脇に差し込み、地中の熱を吸収する技術の導入によって解決ずみとされていた。
しかし、開通1カ月足らずで問題が生じたうえ、温暖化傾向で夏の気温が上昇するとの予測のなか、今後、根本的な技術の見直しや運行管理に影響が出てくるのは必至とみられている。
 
一方、1日2500人の旅客輸送量しかない同鉄道には数十倍の乗車希望者が殺到し、23日から乗車券販売は一時停止された。しかし乗車券管理の不備もあり、すでに募集済みの旅行社ではツアーのキャンセルが相次ぎ、多大なキャンセル料に悲鳴を上げているという。