10年の中国鉄路状況

10年は高速鉄道の開通ラッシュ

CRH2E  08年に高速鉄道時代を迎えてから、まる2年目を迎える中国鉄道。2010年も新規建設の勢いは止まることをしらず、8235億元の資金が投入されることになり、そのうち7000億元は基礎設備に充てられ、9万キロ以上の営業距離を伸ばす計画だ。
 
 なかでも、中長期鉄路網計画に基づく高速鉄道の整備が全国で着々と進み、2010年頭の時点の高速鉄道(時速200キロ以上)の営業区間は6552キロ、そのうち時速250〜350キロの高速区間は3676キロに達し、距離だけならすでに世界一位に躍り出ている。
 当初の目標は、2012年までに在来線の営業距離を11万キロ、高速鉄道の営業距離を1.3万キロまで伸ばすこと。各省の大都市を中心に、半径300キロ圏内が1時間生活圏、500キロ圏内が2時間生活圏として完成される。
 高速鉄道開通により都市間の距離が縮まることで、ヒトとモノの動きに拍車がかかり、最終的にはひとつの経済圏が完成される。北京や上海など大都市を基軸とした経済成長が周囲の中規模都市にじわりと波及。同じ経済圏における物流、住居、教育、金融などの分野が伸び始め、都市と都市の間の空白地帯に新たなるベッドタウが生まれる可能性もある。そこに教育基地や物流センターなどの建設などさらなる開発が続けば、ひいては経済成長を推進するきっかけにもなる。
 高速鉄道開通によりもたらされる都市開発と経済成長。それは政府が進めている和諧社会の実現へのステップアップでもある。
 
2010年は高速鉄道開通ラッシュ。
 2010年1月30日は武広高速鉄道の武漢〜広州南間が開通。2月6日には鄭西高速鉄道の鄭州〜西安間が開通。4月26日には福厦鉄道(福州〜厦門)の開通を控えており、7月には滬寧高速鉄道(上海〜南京)が盛大な開業を迎える。さらに10月末には珠江デルタ経済圏の成長を担う広深高速鉄道(広州南〜深セン北・龍華)、11月には湖北省と重慶を結ぶ宜万鉄道(宜昌)が開通予定。
 宜万鉄道は中国鉄道が重点的に開発を置いている滬漢蓉(上海〜成都)高速鉄道の重要なひとつのエリアである。この路線が開通すれば、動車組を走らせることで、上海と成都間が10時間台で結ばれ、在来線快速利用より20時間の時間短縮が望まれる。
 同時に切符入手困難の解決を図るため、2012年までの2年間に投入する予定の動車組は800本以上、電気機関車は7900台以上、空調客車は66%以上を占める。
 

中国鉄道概論

 日本の25倍の広さを持つ中国。現在、中国の鉄道は、北京を本拠に置く中国鉄道部を頂点に、各地方鉄路局、一部地方鉄道、駅という組織で成り立っている。
 レール式の標準軌を採用し、07年の時点で、総営業距離7万8000km(地方鉄道、合資鉄道を除く)のうち、複線は2万7000km、電化路線は2万5500kmに達しており、北は満洲里、南は海南島、西はウルムチ、カシュガル、ラサとくまなく全国に渡り鉄道網が敷かれつつあり、なかでも東北から沿岸地域にかけて路線が集中している。中国鉄道では、現在旅客よりも貨物運輸の方を重視しており、新線が開通すると最初に貨物を通してから半年後ぐらいに旅客が投入される。
 永らく蒸気機関車の天国が続いたが、ディーゼル機関車の配置換えが一気に進み、国鉄幹線はおろか、地方鉄道も全滅の危機に瀕している。一方主力幹線の電化も進み、時速200kmを誇る高速列車やスピードの遅い貨物が雑居しているものの、割りと正確にダイヤが組まれ、旅客は約7分に1本、貨物は約3分おきに1本と集中運行が行われ、世界レベルから見ても、ダイヤの管理能力はずば抜けている。
 過去10年で6回の速度向上を意味するダイヤ改正を果たしたのち、主力幹線の飽和状態を解決させるため、中長期鉄路網計画による高速鉄道網の整備と、石炭を中心とした貨物の輸送力増強を推し進めるため、八縦八横※による既存路線の整備と新線建設が進んでいる。将来、旅客と貨物の分離が徹底化されることにより、物流の効率の向上も期待できる。
 現在、北京〜天津間で時速300kmの京津高速鉄道の開通が行われ、在来線では、城際列車という中短距離を中心とした都市間快速が大都市間を中心に多い地域では1日100本の往復運行が行われている。また、路線によっては長い時間をかけて運行を行うため、夜行列車を兼ね備えた長距離列車の本数も充実している。
 各都市においては排気ガスを排出するバスに代わり、地下鉄、軽軌らの建設が急ピッチで進められている。また、東北地方では市電も残されており、車両も最新式のものにリニューアルされている。
 切符は10年前に比べると、新線の開通や列車本数の増加により、始発駅から発車する列車などでは入手も容易になったものの、四川や新疆ウイグル自治区、チベットなどは「1枚の切符」すら手に入れることが今なお難しい。
 
八縦八横
八縦
京哈線(北京〜ハルピン)
東部沿海鉄道(瀋陽〜大連〜煙台〜杭州〜寧波〜温州〜アモイ〜広州〜湛江)
京滬線(北京〜上海)
京九線(北京〜深セン/九龍)
京広線(北京〜広州)
大湛線(大同〜湛江)
包柳線(包頭〜柳州〜南寧)
蘭昆線(蘭州〜昆明)
八横
京蘭線(北京〜蘭州)
隴海線(連雲港〜蘭州)
蘭新線(蘭州〜ウルムチ)
寧西線(南京〜合肥〜西安)
滬昆線(上海〜株洲〜昆明)
煤運北通道(大秦線、朔黄線)
煤運南通道(太原〜徳州、長治〜青島、侯馬〜日照)
沿江通道(重慶〜武漢〜南京〜上海)
西南出海通道(昆明〜南寧〜湛江)

簡単な中国鉄道分布範囲

連絡線中国の鉄道では中央の鉄道部を中心に全国で幾つかの鉄路局(公司)を運営しております。
 
ここでは各鉄路局とその拠点駅、主な駅を紹介いたします。

鉄路局 略称 拠点駅 主な駅
哈尓濱鉄路局 哈局 哈尓濱 牡丹江、佳木斯、斉斉哈爾、海拉爾、満洲里
瀋陽鉄路局 瀋局 瀋陽 大連、長春、吉林、丹東、通遼、赤峰、山海関
呼和浩特鉄路局 呼局 呼和浩特 包頭、二連
北京鉄路局 京局 北京 天津、石家庄、唐山、秦皇島
太原鉄路局 太局 太原 大同、運城、平遥
済南鉄路局 済局 済南 青島、泰山、徐州、連雲港
上海鉄路局 上局 上海 合肥、南京、鎮江、無錫、蘇州、杭州、寧波、温州、阜陽
鄭州鉄路局 鄭局 鄭州 安陽、新郷、許昌、商丘、洛陽、三門峡
武漢鉄路局 武局 漢口 武昌、襄樊、宜昌、十堰
南昌鉄路局 南局 南昌 九江、吉安、龍岩、武夷山、福州、厦門
広州鉄路集団公司 広鉄 広州 長沙、懐化、東莞、深セン、汕頭、三水
西安鉄路局 西局 西安 宝鶏、安康、漢中、延安
南寧鉄路局 寧局 南寧 柳州、桂林、湛江、茂名
成都鉄路局 成局 成都 重慶、達州、広安、広元、攀枝花、貴陽
昆明鉄路局 昆局 昆明 大理、広通、曲靖
粤海鉄路公司 海口 三亜
蘭州鉄路局 蘭局 蘭州 銀川、武威、天水、嘉峪関、敦煌
青蔵鉄路公司 青段 西寧 格爾木、拉薩
烏魯木済鉄路局 烏局 烏魯木済 吐魯番、哈密、庫爾勒、阿克蘇、喀什