切符を購入する

武広高速鉄道の磁気切符  中国鉄道を乗車したことがある人なら誰でも体験したことのある切符入手の困難。日本の電車のように、A駅に○時に来る列車があるから、これでB駅まで行って、B駅から○時の列車でC駅に向かう、といった感じに時刻表上の列車をつなぎ合わせて移動することは、よほど計画性がないと実行は厳しいのが現実だ。
 現在切符は、全国でコンピューター管理によるオンライン化が進み、発券では機械で行なわれ、10数年前に比べ購入しやすくなったものの、忘れてはいけないのが、「中国は日本とは事情が違う」こと。国が変われば制度も変わり、意識を変えないと旅行自体が不可能になる。

ここが違う日本と中国との切符発売システム

(1) 中国鉄道で走る列車には「のぞみ」や「北斗星」など独自の呼称はなく、全て1〜9999の番号表記となる。快速以上の列車には頭に英文字が付く。
(2)中国鉄道自体に周遊券やレールパスという設定がない。
(3)中国には座席車、寝台車全て指定席で設定されており、自由席はない。 (4)切符は座席順に発売していくので、窓側や○号車といった座席や車両の指定はできない。
(5)切符は基本的に販売員との対面販売方式。自動券売機設置の駅はごくまれ。
(6)全国で切符のオンライン化が進み、「異地售票」と呼ばれる往復切符や違う場所の切符も購入できるが、アテにできない。
(7)途中駅で切符購入する場合、無座か硬座を引く確率が非常に高くなる。

列車の種類

最初に目的地を調べる方も多いでしょうが、まずはどんな列車が走っているか知っておいてください。
 
列車の種別 番号範囲 備考
高速動車組旅客列車G1〜G9998 読み方はG=高速(gaosu)。
最高時速350キロを走る動力分散式電車。
2010年末に開業を控えた京滬高速鉄路で使用か。
跨局G1〜G5998
管内G6001〜G9998
城際動車組旅客列車C1〜C9998 読み方はC=城際(chengji)、都市間。
最高時速250〜300キロを走る動力分散式電車。
現在は京津城際鉄路のみで使われている。
跨局C1〜C1999
管内C2001〜C9998
動車組旅客列車D1〜D9998 読み方はD=動車(dongche)。
最高時速200キロ走る動力分散式電車。
主に新幹線タイプや外国メーカの車両が使われている。
跨局D1〜D3998
管内D4001〜D9998
直達特快旅客列車Z1〜Z9998 読み方はZ=直達(zhida)。
最高時速160キロで走るノンストップで走る特快列車。
軟臥が一番多く編成されていまる。
特別快速旅客列車T1〜T9998 読み方はT=特快(tekuai)。
最高時速140キロで走る長距離列車・短距離列車。
車輌はやや古いが今の中国列車の屋台骨を支えている。
跨局T1〜T4998
管内T5001〜T9998
各鉄路局範囲哈局 T5001〜T5300、瀋局 T5301〜T5600、京局 T5601〜T6000
太局 T6001〜T6300、呼局 T6301〜T6400、鄭局 T6401〜T6700
武局 T6701〜T7000、西局 T7001〜T7300、済局 T7301〜T7600
上局 T7601〜T8000、南局 T8001〜T8300、広鉄 T8301〜T8700
寧局 T8701〜T8880、昆局 T9001〜T9200、蘭局 T9201〜T9400
烏局 T9601〜T9600、青段 T9601〜T9800
快速旅客列車K1〜K9998 読み方はK=快速(kuaisu)。
最高時速120キロで走る長距離列車・短距離列車。
T特快と同じく、今の中国列車の屋台骨を支えている。
09年3月末までは管内快速は”N”表記だったが、
同年4月よりKの4桁に変更となった。
跨局K1〜K6998
管内K7001〜K9998
各鉄路局範囲 哈局 K7001〜K7300、瀋局 K7301〜K7700、京局 K7701〜K7800
太局 K7801〜K7900、呼局 K7901〜K7950、鄭局 K7951〜K8050
武局 K8051〜K8150、西局 K8151〜K8250、済局 K8251〜K8350
上局 K8351〜K8700、南局 K8701〜K9000、広鉄 K9001〜K9300
寧局 K9301〜K9350、昆局 K9601〜K9660、蘭局 K9661〜K9740
烏局 K9741〜K9800、青段 K9801〜K9850
普通旅客列車1001〜5998 普快もしくは普客。
停車駅が多く、非空調車両の割合も多いため切符が安く、
車内はいつも混んでいる。
人によっては【不快】と揶揄する人も。
跨局、3局以上1001〜1998
跨局、2局以上2001〜3998
管内4001〜5998
普通旅客慢車6001〜7598 普快をさらに遅くさせた列車。
9.999%が非空調車両となっている。
跨局6001〜6198
管内6201〜7598
臨時旅客列車L1〜L9998 読み方はL=臨時(linshi)。
春運、夏休み、兵交代、大型連休などで走る。
特快列車の3倍は時間がかかると覚悟した方がいい。
臨時旅游列車Y1〜Y998 読み方はY=旅游(lvyou)で観光列車。
北京郊外鉄路のS2線もYが使われている
たまにいい列車が連結していることも。

切符残数サイト

 2010年前後に登場した、鉄路客戸服務中心というサイトで、余票というページに、切符の残数が1枚単位で表示されるようになりました。
 発売期間中に日にちと列車番号、もしくは区間駅名を中国語で入力すれば、一発で残数が表示されます。
 しかも、他サイトではなかなかお目にかかれなかった、動車組の一等席と二等席、特快などの高級軟臥など、イレギュラー扱いだった切符もそのまま表示されるようになっています。

座席の種類

次は座席の種類です。乗車する座席により、疲れの差が広がります。
初めに言っておきますが、中国の車輌は乗客をより多く乗せることを目的とした造りです。快適はほとんど考慮されていないのが現実です。
 
座席の種類 特徴など
硬座 yingzuo 一番安く、一番汚く、一番疲れる座席です。
最近空調が効いている車輌が増えましたが、
それでも一番乗り心地の良くなさではダントツです。
硬座での夜越えはお勧めできません。シート列は2+3です。
軟座 ruanzho 日本で言うグリーン車に当たります。
ほとんどが昼間の列車に連結されています。
軟席候車室が使えます。シート列は2+2です。
硬臥 yingwo 日本で言うとB寝台です。
1エリアは向かい合わせ3段ベットの6人部屋になっています。
中段と上段の上下空間の狭さは特筆です。
カーテンや扉は無く、仕切りありの車輌と仕切り無しの車輌と2種類あります。
上段と下段とでは下段のほうが料金は高いです。
軟臥 ruanwo 日本で言うとA寝台。
向かい合わせ2段ベットの4人部屋でコンパートメントに分かれています。
普通の中国列車の上級クラスの車輌です。料金は硬座の約3倍です。
上段と下段とでは下段のほうが料金は高いです。
高級軟臥 gaojiruanwo 一部の直達特快や特快に連結されている、2人用の車輌です。
別名高包や高級軟包とも言われています。料金は軟臥の1.8倍です。
無座 wuzuo 文字通り席がないので立ち席という意味。
列車にもよるけどほぼ硬座行きで、混んでいる場合だと
10数時間立ちっぱなしという状況も十分にあり得ます。

切符料金について

料金参考例 北京〜上海1463km
列車種類
座席
空調
料金
所要時間
D寝台
高級軟臥
1470元
10時間
特快
高級軟臥
921元
13時間
D寝台
軟臥
730元
10時間
特快
軟臥
499元
13時間
D列車
一等席
409元
10時間
特快
硬臥
327元
13時間
D列車
二等席
327元
10時間
普快
硬臥
×
190元
24時間
特快
硬座
179元
13時間
普快
硬座
×
88元
24時間
 中国の切符価格系統は、距離に比例して何種類もの+α料金が加わっており、またエアコンありなしでも料金が変わってくる。日本のように乗車料金+特急料金+寝台料金と複数の料金表示は存在せず、一括にまとめた料金が切符の額面となる。
 
(1)快速料金(Z列車、特快、快速が該当)
(2)動車組料金(D列車が該当)
(3)軟席料金(軟座、軟臥、高包が該当)
(4)空調料金(新空調表記が該当)
(5)寝台料金(硬臥、軟臥、高包が該当)
 
 快速料金は快速列車クラス以上の列車に適用され、掲載されていないがD列車料金は動車組専用の料金に適用される。それ以外は普通もしくは普快料金となる。また、軟席料金とは軟座車、軟臥車などに適用される。
 そして、これらの種類を組み合わせることによって、同じ距離でも様々な料金体系が発生するが、基本的に「快速料金+軟席料金+空調料金+寝台料金」が最も高く、「普快料金+座席料金+非空調料金」は最も安い。また寝台料金でも、上段ベッドは安く、下段ベッドは高くなる。結論として、優等列車の料金は高いものの快適な設備を持ち、目的地まで時間を優先して運行する。反対に安い切符はそれなりのサービスしか受けられず、途中駅では常に優等列車に追い抜かれ、目的地到着時間も大幅に遅れることもしばしある。
 また、切符に「新空調」と書かれていれば、文字通りエアコンがある車両で、夏場は快適。エアコンなしの車両は「非空調」と呼ばれ、切符上には何も表示されないが料金はエアコン車より安い。一般的に緑色を纏った「緑皮車」と呼ばれる22系や25B系などが該当し、年式の古い旧型客車は暖房さえも設置しておらず、夏は蒸し風呂、冬は冷凍庫となる。
 
 最後に、閑散期における一部の長距離列車やマイナー路線を走る列車では、切符を割引価格で発売しており、エアコン料金を省いた金額になることが多く、1〜2割お得になっている。切符には割引の意味を示す○に「折」マークが入っている。

切符のキャンセルと列車変更

キャンセルは発車直前まで

 中国鉄道の場合、切符のキャンセル(退票)受付時間は団体切符だと発車48時間前、個人だと発車直前までに払い戻し手続きを行なわないと、紙屑同然になる。手続き場所は発券した駅の「退票窓」で行なう。また場外切符売り場で買った切符や、旅行会社を通して買った切符も同様に、発券駅で手続きを行なわなければいけない。キャンセルの手数料は切符の額面に対し、20%かかるため、高額切符になればなるほどキャンセル料も高くなる。また、春節の帰省ラッシュ、春運では期間中は切符のキャンセル時間が6時間前に前倒しされるので要注意。
 乗車事前に列車変更や出発の変更が生じた場合、「改簽」と表示された窓口で1度だけなら希望に合った切符があれば無料で交換してもらえる。交換した切符はキャンセルができない。また普通の列車からD列車への改簽は行えないので注意。列車のなかには稀に停運(運行中止)が発生することもあり、その時は切符代の全額が返ってくる。

車内での切符変更

 途中駅から乗車する場合、大半の駅では切符が売り切れ、もしくは座席以上の切符をあつかっておらず、低グレードの硬座、無座切符しか発売しない。そのため、乗車できる車両は硬座車両のみで、車内が混んでいれば座る席すらないという一番惨めな状態に置かれる。この環境から脱出したければ、座席を変える手段しかない。
 列車には必ず列車長が1名か2名が勤務している。硬座に列車長室があり、列車長はだいたいそこにいる場合が多い。そして、座席のランクを上げるなら直接列車長と交渉して硬臥なり軟臥なり、希望する座席に換えてもらう必要がある。この座席の交換を「補票」という。
 列車が発車して1時間経つと、空いている硬臥や軟臥はすぐ補票を開始するため、補票を考えているなら、すぐに行動を起こそう。列車長との交渉方法は中国語か筆談で行なう。
 もし上手く補票が成功すれば、ランクの上がった座席料金から、移った時点から終点までの座席距離と最初に買った切符の料金が差し引かれ、手数料5元プラスされた料金が提示され、その分の料金を支払えば終わりとなる。また、ランクの高い席から低い席への変更も可能で、座席があれば、乗車した距離と切符の差額が払い戻されるが、払い戻し料金に20%の手数料がかかるのでお得とはいえない。おなじパターンで、列車走行中ランクを下げることもできるようになった。
 ただ、実際補票の希望者も少なくなく、中には乗務員に賄賂を渡してやっと補票を受け付けてもらえたというケースもある。どのタイミングで補票を行なうか? それは未だに明らかにされていない。

途中乗車と乗り換え

 中国鉄道では、手間がかかるが、キャンセルの項目で説明した「改簽」という手続きで乗り換えができる。途中下車して再乗車する場合、出口付近に「中転」と書かれた窓口があるため、下車した駅から再び乗車する手続きを取ることになる。
 ただし、ここでは前の列車と同じ座席で受け付けてもらえる可能性は限りなく低く、大抵硬座か無座になる。その際の差額は支払われるが1枚5元の手数料が発生する。また、乗り換えも同じく中転窓口で改簽の同様の手続きを行なう。
 しかしながら、窓口の使用言語は全て中国語でなおかつ再乗車してから補票の手続きを考えるとリスクはきわめて高く、できることなら始発列車の本数が多い大きい駅に出るか、初めから途中下車を含めた旅行の計画を練る方が後々楽になる。