武広高速鉄道の開通

世界最速350キロ! 武漢〜広州北最短2時間57分!!

武広動車組の磁気切符  12月26日に開業した武広高速鉄道。専用の高速規格路線と時速350キロの和諧号・CRH3らを走らせることで、広州から武漢までの1068キロをわずか3時間弱で結ぶことに成功。10時間近くかかっていた在来線の所要時間を大きく短縮し、航空機に迫る勢いを実現した。
 この高速鉄道開通後、華南の交通勢力図は一気に塗り替えが進むと同時に、すでに完成されている合武高速鉄道との連接で、合肥まで5時間、上海に至っては8時間弱での移動も可能となってくる。

華中と華南の大動脈

広州北駅の武広高速鉄道  武広高速鉄道は、04年に決議された全国に高速鉄道網を張り巡らす中長期鉄路網計画の主要幹線のひとつ、2012年京広高速鉄道の武漢〜広州区間を指す。建設理由のひとつに、逼迫した在来線の輸送問題の解決がある。足の遅い貨物と足の速い旅客が混在するため、列車そのものの平均速度が上がらないのだ。
 そのため計画では、高速運行を維持させるために、できるだけカーブを減らすよう地図上にはまっすぐな計画線が引かれた。そして建設では、高い山にはトンネルを掘り、険しい谷には橋梁を架け、なだらかな丘を削るなどをしてまったく新しい線形を整えていった。やがて、09年の6月にはレールが敷かれ、同月に送電を開始。7月には和諧のCRH2Cがテスト運行を開始している。
 同路線も魅力は、空港のない広東北部、湖南南部の各都市にも停車すること。短時間で武漢に、広東に行けるこのツールで人の流れが活発化になり、内陸部の経済活性化に繋がるとの期待も持たれている。

主力はCRH3とCRH2C

CRH2C  武広高速鉄道は路線ジャンルとしては旅客専用線として扱われる。これは足の遅い貨物の運用を禁止して、旅客列車のみを走らせるというもの。しかも、高速運転を実現させるためには専用の高速車両が必要。そこで登場するのが京津城際鉄道で実績のあるドイツから帰化したICE3ことCRH3とはやて系列のCRH2Cが同区間を担当する。CRH3は、09年12月9日のテスト運行で時速394キロを記録しており、3時間台定期運行への弾みをつけた。そして実際の営業では時速350キロ運転を実施。競合する航空業界にとって、同路線の開通は非常に脅威だ。

 肝心の列車番号は、頭文字に高速(Gaosu)を意味するGが登場。この列車番号使用は武広高速鉄道が全国で最初となる。現在、09年12月26日から10年1月29日まで1日28本が運行され、すべて8両重連の16両編成で運転。これだけ走っていれば、切符購入もラクラクだ。  
 武広高速鉄道で使用されているCRH3のうち、8両1編成の19本は唐山工場で製造されたもの。開通直後、同列車の平均時速は341キロとこれまでの京津城際鉄道の平均時速320キロを上回り、世界営業最速の金字塔を打ち立てた。また応援列車として済南鉄路局から5本のCRH2Cが回されている。

起点となる広州北駅と南駅

広州南駅  武広高速鉄道の起点となる駅はそれぞれ、北は武漢駅、南は広州南駅となる。広州南駅は、番禺石壁にて建設中で、開業予定は1月30日。そのため、それ以前は花都の広州北駅が起点の代わりを務めることになる。
 広州南駅は鉄筋構造のアーチ型駅舎となっており、遠くから見えるその光景はSF映画に出てくる空中要塞をほうふつさせる威容を誇る。37万平米の駅建築総面積は4つのサッカー場がスッポリ入る広さ。15本のプラットホームが居並ぶ駅ホーム面積は広州駅の4倍だ。同駅は、別に広深港高速鉄道(広州〜深セン〜香港地区)、南広高速鉄道(南寧〜広州)、貴広高速鉄道(貴陽〜広州)、広珠軽軌(広州〜珠海)の起点ともなるため、華南鉄道網におけるハブの役割を果たすことになる。市中心から遠く離れているため、開業当日は大規模なシャトルバスの運行を行なう予定だ

 いっぽうの広州北駅は、在来線の広州北駅と同じ駅となる。駅舎の1階は普通列車、2階は高速鉄道の待合室となる。広州北駅そばには花都バスターミナルがあり、こちらは広州駅そばのバスターミナルなどから乗車45分のシャトルバスが朝から夜まで頻繁に発車している。

避けて通れない高い運賃

広州北駅の切符残数状況  さて、所要時間の次に気になるものといえば運賃。現在、発表されている切符の価格は、広州南駅から武漢駅までが一等席780元、二等席490元、広州北駅から武漢駅までが一等749元、二等469元。速度もすごいが価格もすごい。しかも、高速鉄道の乗車率を上げるために在来線の同区間の夜行列車のうち13本廃止というオマケ付きだ。ただ、400元前後のT特快軟臥よりも高い価格設定を見て、正直引いてしまうのが人間の心理。高嶺の花になったという印象は否めない。
 また、競合する航空業界もただ手をこまねいて見ているわけではない。価格常時3割引きなどの価格攻勢に切り替え、航空快線と呼ばれるピストン輸送も開始した。しかもなかには長沙〜広州間、武漢〜深セン間共に300元台と航空券の価格破壊まで表れた。同一運賃の高速鉄道とお得感を打ち出せる航空運賃はどちらが魅力的だろうか。乗車するまでのアクセスを考えれば、インフラ設備が整っている航空機に軍配が上がり、しばらく高速鉄道は苦戦することになるかもしれない。

 開業から初月は初物の珍しさ、2月3月は春節の帰省ラッシュで列車への需要があるものの、その先は不透明。速度に頼る以外の戦略も必要となってくる。高速鉄道開通といっても、戦略ひとつ間違えれば致命的なダメージを蒙るリスクも負わなければいけないのだ。
 26日の開通日は2.3万人の乗車があり、乗車率は9割を超えていた。そのうち広鉄集団によれば39のツアー客2500名も含まれており、11%を占める格好となった。さらに12月31日と1月1日にはすでに広州北駅始発の切符が総量の50%を占める3.6万枚すでに売れており、これらは東莞の旅行会社主催のツアー客が含まれている。
 高いけど便利にもなった武広高速鉄道。春節明けまでの需要はしばらく続くだろう。

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