滬寧城際鉄道の開通
路線の一極集中から分散化へ

データーが古いが、06年の滬寧線の輸送量は1万3336千万トンで、全国でも一番忙しい路線。そのうち、旅客密度は6753万で、ほかの在来線と比べて5.75倍と飛びぬけている。また貨物密度は6573万トンと全国平均の2倍に達している。動車組が走っていない時代ですらこのような状況だからこそ、すぐにでも新路線を設けたい気持ちだっただろう。
ちなみに07年の第6回ダイヤ改正以降、列車本数は136本。そのうち、旅客列車は103本とすでに悲鳴が上がっている状態だ。在来線の提速化も実施されたが、これではほとんど焼け石に水だろう。
同路線は江蘇省と上海間の鉄道通勤をも視野に入れた高速鉄道となっており、使用車両は時速350キロの動車組。南京と上海を最短で75分で結ぶことを目標に建設された。そのため、2011年に開通を控えている京滬高速鉄道とは別路線となり、将来は南京〜上海間で3本の路線が敷かれることになる。滬寧線の分散化は列車のダイヤ短縮と輸送力増加にそれぞれ結びつくことを意味するのだ。
最短片道運行は75分

いっぽう在来線の方も、動車組が高速路線に移行したことで、慢性化していた動車組退避待ちによる”速度慢化”からの脱却と輸送力増加の2つアドバンテージが生まれた。とりわけ、在来線の方では夏になると問題化する電力に必要な沿岸都市への石炭輸送の解決にひと役買ってくれると期待されている。
高速鉄道通勤の確立

滬寧城際鉄道の試みは、日本の新幹線と同じように、通勤型高速列車へ確立させることだ。路線は在来線とほぼ併走するように設計されているが、上海から無錫の区間は外資系企業の工場が密集する開発区があり、新しく駅が設けられた。また、列車の約半分は南翔北駅から分岐する虹橋空港(上海虹橋)へと繋がっている。
つまり、出張者が昆山や蘇州、無錫などへの開発区へ行くときは、これまでは虹橋空港から高速バスを使った移動方法しかなかったが、新たに高速鉄道というツールが増えたため、空港からそのまま高速鉄道で開発区まで行けるようになった。上海虹橋から昆山南まで約20分、蘇州まで約35分、無錫まで約50分の所要時間は上海へ出張する人にとっては心強いアクセスとなる。
いっぽう、土地バブルでマンションが買いづらくなった上海。一部の中層階級の人たちは郊外の蘇州や無錫から高速鉄道に乗って上海へ出勤しようとする動きが出てきている。日本の通勤新幹線と同じ流れだ。


移動に便利にな高速鉄道だがいっぽうでは、物価のインフレも避けては通れないジレンマを抱えている。料金が自由化されている飛行機と比べ、強気の固定価格はやや鉄道が不利な状況だ。300キロ区間までなら高速鉄道が有利だが、それ以上だと飛行機の方が便利と感じ取る人も少なくない。同路線は年間輸送6000万人を目標にしているが、料金の値上げがきっかけで鉄道離れが起こらないように祈りたい。
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